Special Interview永作博美×井浦新

辻村深月のヒューマンミステリー小説を『あん』や『光』などで知られる河瀨直美監督が映画化した『朝が来る』。実の子どもを持てない夫婦と、産んだ子どもを育てることができない少女の物語を軸に、それぞれの葛藤や家族の絆を描く。

主人公の夫婦・佐都子と清和を演じている永作博美と井浦新は、今回が「河瀨組」初参加。対談では、河瀨流の演出を受けた感想や特別養子縁組という制度に対する思い、それぞれのスマホライフについて語ってもらった。

※2020年6月10日時点の情報です。

河瀨監督は自分が撮りたいという欲求に対して素直な方(永作)

お二人は「河瀨組」初参加ですが、河瀨監督の現場に対してどんなイメージがありましたか?

永作河瀨組に参加した人たちの話を聞けば聞くほど分からなくなっていました。きっと、すごく難しくて大変な要求をされるんじゃないかなって。それはそれで興味があって、ぜひやってみたいと思っていたので、今回はお声掛けしていただきとてもうれしかったです。

井浦僕は10年以上前にオーディションを受けたことがあって、その時に一度お会いしているんです。ほんの一瞬でしたけど、河瀨監督の存在を肌で感じることができました。その時は、自分の中で何を大切にしているのか、どう生きてきたのかといったような世間話をして、井浦新とはどんな人間なのかというものを引き出されるような会話だったんです。とても特別な時間だったことを覚えています。

実際に河瀨監督の演出を受けた感想は?

永作話に聞いて想像していたような現場ではなかったです。河瀨監督は自分が撮りたい、もっと欲しいという欲求に対してとても素直な方。ただ純粋に「もっと知りたい」という思いがいっぱいある人なんだなと思いました。

井浦普段はとてもキュートな方です。何か難しいことを話し合うというわけではなく、ユーモアを持って普通に世間話をしたりして。以前オーディションを受けた時はご縁がなかったんですけど、今回は河瀨監督が「清和は井浦くんにやってもらいたい」って仰ってくださって。それはありがたいことでしたし、あの時にちゃんと伝えられなかった、もしくはしっかりと示せなかったことを今の自分にできるのか。これは、大きなチャレンジになるなと感じました。

永作すべての役者に経験させるという“役積み”のようなことをする現場は新鮮で、自分を掘り起こしていくということに対してすごく勉強になりました。

井浦河瀨組の作品に数多く出演されている永瀬(正敏)さんとご一緒した時に「今度、河瀨監督の作品に入ります」って伝えたら「聞いてるよ」って(笑)。「新くんは大丈夫だと思う。きっと合うはず」と言っていただいたので、とにかくクランクインを心待ちにしていました。監督の映画に対する思い、スタッフやキャストへの愛情は本当にすごい。だからこそ要求されるハードルが高かったりもするんですけど、この監督についていけば大丈夫という安心感があるんです。河瀨組を信じてすべてを委ねられる。とても純度の高い現場だなと思いました。

自分と清和の距離感がない状態で作品の中にいたような感覚(井浦)

劇中の夫婦に関しては、実際に子どもがいる人をキャスティングしたという話を聞きました。演じる上で親としての感情や経験が生かされたなと感じたことは?

永作私の場合は、子どもの扱いにある程度慣れている分、それがどう出てくるのかちょっと不安でした。特別養子縁組がテーマになっているということで、実際の親子とはちょっと違う距離感がある関係が描かれているんです。普段の生活では自分と血がつながっている子どもと接している私が演じた時に、距離感の違いのようなものをちゃんと出せるのか。それが不安だったので、井浦さんにお会いした時にその感覚ってどうなんだろうって話したら「関係ないと思いますよ」って言ってくれて。実際、演じてみたら全く関係なかったことが分かりました。河瀨組ならではの“役積み”のおかげなのかもしれません。撮影していない時でも3人の関係が出来上がっていたので自然と親子になっていました。

井浦それはやっぱり永作さんが“役積み”の段階で、実際に母親として息子の朝斗(佐藤令旺)との関係をしっかり積んで対応していたからなんです。だからこそ、二人が親子としてそこにいられたんだろうなと思います。

永作撮影の合間は普通に遊んでいたもんね。結構無茶なリクエストされたりして(笑)。でも、ちょっと子どもが調子に乗ってしまった時は、ちゃんと井浦さんがたしなめる場面もありました。そういう風に役を積んで家族になっていったような気がします。

井浦そういう関係が出来上がったからこそ、父親として自然と注意ができたんだと思います。河瀨組の中で過ごした3人の時間は演じる上でとても大切なものでした。

演じたキャラクターに共感できる部分はありましたか?

永作みんなずっと翻弄されていたような気がします。いつも選択に迫られていたなっていう印象。佐都子はずっと悩んでいるんですけど、どっちにしたらいいのか分からなくてどうしようってなっている気持ちには共感します。やっぱり、日々そういう場面ってありますからね。特に子どものこととか。劇中でも朝斗と友達の間で起こったことに対して自分の子どもを信じつつ、どこか気持ちがザワザワしていて。みんないろいろあるよなって実感しました。

井浦共感になるかどうか分からないですけど、河瀨監督の作品の中では演じるということではなく、そこで清和として生きていなければいけないという感覚があるんです。だから、正直なところ清和に何かを共感するというような余裕がなくて。自分と清和の距離感がなくなった状態で作品の中に存在していたような感覚なんです。

永作その感覚、分かるかも。自分の役を客観的に見た覚えがないんです。俯瞰で見ることができなかった。

井浦そうなんです。何か不思議な感覚でしたね。ただ“共感”という意味でいうと、清和はずっと順風満帆な人生だったんです。学生時代も社会人になっても。でも、自分が無精子症だと分かってショックを受ける。その時に、同僚や家族の前で弱いところをさらけ出すことができる清和って何かいいなって。妻の佐都子さんや周囲の人たちに支えられたから挫けずに前を向くことができたんでしょうけど、清和のように生きられたらいいなと思ったことはあります。

本作は佐都子、清和、朝斗の親子の物語に加え、朝斗の産みの親であるひかり(蒔田彩珠)の視点も描かれています。数年後に夫婦がひかりと再会するシーンも見どころの一つですね?

永作実は、ずっと蒔田さんとは会う機会がなかったんです。

井浦その間は現場でも顔を合わせていない。河瀬組ならではと言いますか、そこは徹底していましたね。

永作待つという状況もリアルに進んでいましたね。彼女のことを家で待っているという設定でしたけど、清和である井浦さんと「全然来ないね」って話したりして。リアルにドキドキしていました。私たちは14歳だったひかりの姿しか知らないわけですから。目の前に現れた女性を見て本当にびっくりしました。

井浦何が起きたのか分からなかったです。

永作もちろん、脚本があるのでその通りに進んでいくんですけど、たまに河瀨監督が本人だけにちょこちょこって伝えるものがあるんです。それは、言われた人しか分からない。それが突然、本番で出てきたりするから「えっ?」ってなるんです。演技というより素のリアクション。でも、それが河瀨組なんだなって実感しました。

原作とは全然違う印象を持つかもしれません(永作)

「特別養子縁組」という制度についてはどう思いましたか?

井浦役を積んでいく段階でいろいろ学んで、演じながら初めて知ることも多くて。自分が特別養子縁組の実態を知らなさすぎたことにショックを受けました。

永作私は養子縁組に関する番組のナレーションを担当したことがあって、本も読んでいたりしたので制度自体は知っていました。ただ、海外では養子であることをオープンにしている国が多い中、日本はまだなかなか言い出せない雰囲気があり告知のタイミングが難しい。そういう世界との違いに驚きました。

河瀨監督は最終段階で外国のスタッフと編集をしているんですけど、やっぱり外国の人から見ると養子縁組に対する日本の受け止め方は不思議に思うらしいんです。河瀨監督が海外へのアプローチと日本に向けてのメッセージの両方を成立させたいと考えた時に、かなり大胆な編集が必要だったみたいです。だから、原作を読んだ人が映画を見たら全然違う印象を持つかも。きっと、河瀨監督ならではの『朝が来る』になっていると思います。

井浦大変なこともあると思うんですけど、僕たちがお会いした養子縁組のご家族は皆さん「幸せです」って仰っていたんです。たとえ血がつながっていなくても、子どもがいてみんなで家族を作っていくということに違いはない。作品を通して、それを強く感じました。

月の満ち欠けと日の出・日の入りが分かるアプリは便利(井浦)

ここからは、お二人のスマホライフについてお伺いしたいのですが、普段どんな風に利用していますか?

永作私は調べ物が多いですね。仕事で使うこともありますし、ニュースを読んだりしています。あとはネットショッピング。子どもが学校で必要なものを買おうとしても、今は文房具屋さんが少ないんですよ。専門店を探すのが大変。急に必要になった細かいものとかをネットで買っています。

井浦スマホは知りたい情報を自分から取りに行ける道具でもあるので、信頼できる情報を入手するために使っています。ネット通販に関してはどちらかというと避けてきたんですけど…。

永作あ、そうなんだ。

井浦でも、数ヶ月前から始めたらホントに便利でびっくりしました。

永作二人共、同じような使い方してるよね(笑)。でも、ほかに何かあるかなぁ。

ちょうどいいパスをいただいたので、お互いにオススメのアプリを紹介していただきたいのですが。

井浦オススメかぁ、自分が使っているのは月の満ち欠けが分かるアプリ。月の形や名前などを知ることができるんです。太陽の日の出と日の入りが分かるアプリもあるんですよ。日によって違うからすごく便利なんです。

永作どうやって使っているの?

井浦例えば明日の日の出が4時31分だとしたら、30分前にスタンバイして日が出るところを見たりとか。

永作そんなに朝早く起きるの?

井浦そうなんです。日の入りの時間が分かれば、その時間帯を意識して黄昏を楽しんだり。

永作なるほど。そういえば、現場では写真をよく撮ってたよね。

井浦花を接写していました(笑)。

永作私はスマホの画面がアプリでいっぱいになるのが嫌なんです。

井浦あぁ、それ分かる。

永作オススメのアプリと言われたら、やっぱり何かを調べる時に使う辞書とか。あとは読めたり、聴けたりするものぐらいかな。

井浦読むといえば、本は紙じゃなきゃ許せないタイプだったんです。

永作分かる、分かる。

井浦でも、最近は本棚に入りきらなくなってきて本を買うことが億劫になってきたんです。そんな自分が嫌でしょうがないんだけど、本を読みたいという欲求は変わらずあって。本を購入できるアプリは自分の中で許すことにしました。アプリで探してみたらびっくりするぐらい何でもあるんですよね。

永作私もそうですけど、アナログを愛する人たちってまだまだいっぱいいるんですよね。さっきの月の満ち欠けのアプリだって、昔は日めくりタイプのカレンダーを買ってましたから。ただ、スマホの便利さを知ってしまうと手放せないですよね。

井浦きっとキリがない世界でしょうから、便利さに甘んじすぎると大変なことになるなと。なくなったら何もできなくなってしまうなんてことにならないよう依存しすぎない程度にスマホを楽しみたいですね。

Profile

ながさく・ひろみ
1970年10月14日生まれ、茨城県出身。最近の主な出演作に、映画『ソロモンの偽証 前篇・後篇』『夫婦フーフー日記』『ペット』『ペット2』(日本語吹替版)、ドラマ『あの家に暮らす四人の女』など。

いうら・あらた
1974年9月15日生まれ、東京都出身。近作に、映画『嵐電』『宮本から君へ』『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』、ドラマ『連続テレビ小説 なつぞら』『ニッポンノワール -刑事Yの反乱-』など。

Information

『朝が来る』
10月23日(金)全国ロードショー

Story

子どもを持つことを諦めた夫婦・清和(井浦)と佐都子(永作)は「特別養子縁組」で男の子を迎え入れる。そして、6年後。二人は、朝斗(佐藤)と名付けた息子の成長を見守る幸せな日々を送っていたが、朝斗の産みの親である“片倉ひかり(蒔田)”を名乗る女性から電話が掛かってきて…。

監督・脚本・撮影:河瀨直美
原作:辻村深月『朝が来る』(文春文庫)
出演:永作博美、井浦新、蒔田彩珠、浅田美代子 ほか

©2020『朝が来る』Film Partners

撮影:松井伴実 取材・文:小池貴之
〈永作さん〉
ヘアメイク:福沢京子 スタイリング:鈴木えりこ
衣装協力:ジョンスメドレー(03-5784-1238)、チェリーブラウン(03-3409-9227)
〈井浦さん〉
ヘアメイク:樅山敦(BARBER BOYS) スタイリング:上野健太郎
衣装協力:ジャケット53,000円、パンツ32,000円(以上キャプテン サンシャイン/キャプテンサンシャイン)、Tシャツ6,000円(エルネスト クリエイティブ アクティビティ/マイトリー)、メガネ74,000円(ミスター ライト/ブリンク外苑前)、シューズ16,000円(アディダス オリジナルス/アディダス ジャパン株式会社)

サイン入り写真プレゼント

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1名様にプレゼント!

応募方法

以下のメールアドレスまでご応募ください。

応募用メールアドレス

nexistyle@nexi.jp

メールの件名は「永作さん、井浦さんサイン入り写真プレゼント」とし、メール本文にクイズの答えのみを記入し、お送りください。(応募時にはお名前、ご住所、お電話番号等の情報は記入不要です。)

■ 応募用クイズ
『朝が来る』で永作さんが演じる役の名前(3文字)は?

応募締切

2020年7月31日(金)23時59分

当選発表

2020年8月3日(月)

厳正なる抽選の上、当選者の方にはメールにてご連絡させて頂きます。 またご連絡の際に、発送に必要なお届け先情報を別途、お伺いしますので当選メール内に記載される期限までにご回答ください。

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注意事項

※応募は1アドレスにつき1回までとなります。
※抽選結果に関するお問合せにはお答えできませんので、予めご了承ください。
※ご応募いただきましたメールアドレスは、当選のご連絡のみに使用させていたします。抽選後は速やかに消去いたします。
※当選した権利およびお受け取りになった賞品は第三者へ譲渡できません。オークションへの出品・営利目的での転売等が発覚した場合は、賞品をご返却いただくことがあります。