高橋克典「舞台 桜の園」インタビュー

Special Interview

高橋 克典

11月の秋、ロシアの文豪・チェーホフの「桜の園」をベースにした舞台に立つ高橋克典さん。テレビで演じてきたさまざまな役で色気や茶目っ気、男らしさを見せてきた彼が「50歳を超えた今だからこそ」と語る挑戦と普遍的な人間ドラマについて直撃!そんなダンディな高橋さんの楽しいスマホライフとは…?

スマホ文化とはマイペース&いい距離感で付き合っていきます

高橋さんはスマホとはどんなお付き合いをされていますか?

「あの…すごく使ってます(笑)。もともとアナログ派なので、最初は結構否定的だったんですけど、周りの方々や、笹野高史先輩がすごく勧めてくださるので、使ってみたら便利で『これはいいな~』と思って」

どんなアプリを使っていらっしゃいますか?

「翻訳、読書、ニュース、それからゴルフ、トレーニングジムのコミュニケーション用のアプリなど、必要に迫られてダウンロードしたものが多いですね。写真加工のアプリとかはもうあまりやらなくなりました」

確かに、ブログは臨場感あふれるお写真や動画が多いです。

「最初はすごく凝っていたんですよ、でも時間がなくて!子供に『パパ、僕と話してるときとブログ書いてるときと、どっちが楽しい?』って言われて、もうドキっとしちゃいました。『お前と話しているときに決まっているよ』って答えて、今はいいペースでやらせてもらっています」

凝らないからなのか、結構な頻度で更新されていますよね。

「仕事中移動が多くて、先々にやらなきゃいけないことがないときは少し更新していますね」

TwitterやInstagramではなく、ブログにこだわっているのは?

「それはただ、もうあんまり広げたくないっていうだけですね。みんなに『Twitterのほうが楽だよ、文字数少ないし』とか、『インスタは写真だけでいいから便利だよ』とか言われるんですけど、ブログは網羅してますから」

高橋さんの性に合ってるんでしょうか。

「というか、ブログもみんなに勧められて始めたけど、『何食べたとかどこ行ったとかそんなに共有する必要あるのかな』っていう気持ちもまだ残っているんです、もともとアナログ派なので(笑)。本当に便利になりましたけど、そればかりじゃ寂しいというか。でも、『そんなもんなのかな』って思いながら僕もそういう写真をめちゃくちゃUPしているんですけど(笑)」

従来の良さにこだわりつつ、積極的に対応していくのがすごいですね。

「まぁ…今ベルボトムを履かないのと同じで、現代社会の流れにそこそこ適応しています(笑)」

昔は難しかったチェーホフも、理解できるようになりました

高橋さんがこの秋挑戦される舞台「24番地の桜の園」も、ある意味、今のお話とテーマ性が共通するような本格派ですね。

「ロシアの文豪・チェーホフの『桜の園』がベースですからね…。学生時代は『地味だな~』『難しいな~』というイメージだったチェーホフも、50年以上生きて触れると、分かりやすいと思うようになりました」

学生時代はどんな演劇を好まれていたんですか?

「僕が学生のころは、東京乾電池さんとか、劇団☆新感線さんとかが結成したてで、元気な時期だったんですよね。もちろん今回演出される串田和美さんの自由劇場もそうだったんですけど、赤テントや黒テントとか、ちょっと敷居が高い感じがして近寄りがたいというか、観に行くのにも気合がいる感じでした(笑)」

その串田さんと1999年の「セツアンの善人」に続き、再びタッグを組むことに…。

「僕は舞台を“アウェイ”の地で、演劇における自分は“後追いのド新人”だと感じているんですけど、串田さんは本当に自由な発想をお持ちなので、彼の創り方ならそういう異物がいてもいい、そこも認めてくれるような良さがあると思っています。とはいえ、串田さんから個人的にお話を頂いたときは、一度お断りしてしまったんですけどね(笑)」

それはどうしてですか?

「舞台は好きでよく観るんですけど、みんな素晴らしくて、そのたびに『こんなこと俺できない』って思うんです。『すごいな~』と思って、見れば見るほど自分が落ち込んでいくんですよね。『絶対無理だ、自分の得意な世界だけでいたほうが自分には有利なんだ』と。でも、自分の世界に閉じこもるよりは思い切ってやってみるのがいいんじゃないかと思い直して、もう一度電話をして、やらせていただきますとお返事しました」

TVドラマなどではオンもオフもまさに面倒見のいい座長として存在してらっしゃいましたが、“アウェイ”の舞台だとどうなりそうですか?

「もう、飲み会とか主催している場合じゃないですよね(笑)。一応主役だから、座長的なこともしないといけないのかなとか思うけど、そんなことじゃないでしょ。一俳優として、自分のこと“だけ”考えて…でも地方公演に行ったら、率先して飲みに誘っているかもしれないです(笑)」

演じるロパーヒンについてはどのように理解されていますか?

「時代が大きくうねる中で、成り上がった農奴上がりの商人です。僕自身も何もない育ちで、家も経済的に困窮していた時期から何がなんでも生きてやると思って必死で過ごしてきているので、物語の中では皆に蔑まれているんですが、僕は彼のことを本当に嫌いになれないですね。自分がかつて仕えていた“桜の園”の貴族たちを本当に愛していたのに、困窮する彼らを想っての提案も軽んじられてしまう。金もない中、一生懸命健気に勉強して商人として成功した、泥にまみれて頑張ってきた彼に罪はなくて、でも成功の満足と憧れの人を追い抜いてしまった悲哀と孤独があって。果たして健気な彼は幸せをつかめたのか、意味があったのか分からないっていう、非常にメランコリックな感覚があります」

かなり繊細で複雑な役ですね。

「はい…最近僕は進行役を兼ねるような落ち着いた役が多かったから、ロパーヒンとして、エネルギーを外に出して存在するということも1つのテーマですね。僕自身、高橋克典個人の人生はメランコリックに行かず、負けないまま、クソジジイになってやろうと思ってますが(笑)。まだ不安100%ですけど、この現場でもいろいろ吸収して臨みたいと思います」

では、最後にメッセージをお願いします。

「タイトルの“24番地の”というのは、上演するシアターコクーンの住所の枝番です。串田さんがチェーホフの『桜の園』をアバンギャルドに味付けして、素晴らしい役者さんたちとともに現代のシアターコクーンならではの美しい『桜の園』を生み出します。僕も、テレビの役で作られた高橋克典のイメージではない姿をお見せしたいと思います。たまにはこういうのもいいか、という感じで、ぜひ芸術性の高い本格的なエンターテインメントを見届けていただけたらうれしいです」

Profile

たかはし・かつのり/1964年12月15日生まれ、神奈川県出身。「サラリーマン金太郎」「特命係長 只野仁」「広域警察」「匿名探偵」「子連れ信兵衛」など多くの主演シリーズを持つ人気俳優。舞台は1999年の「セツアンの善人」以来の串田和美演出作で、今回は2012年の主演舞台「十三人の刺客」以来5年ぶりの出演となる。

Information

「24番地の桜の園」

11月9日〜28日 東京・Bunkamura シアターコクーン
12月2日〜 3日 松本・まつもと市民芸術館 主ホール
12月8日〜10日 大阪・森ノ宮ピロティホール

(原作あらすじ)
20世紀初頭のロシア。地主ラネーフスカヤとその娘がパリから帰国し、兄と養女は再会を喜ぶが、一家の財産は尽きていた。一家に仕えてきた農奴で、今は若き商人として活躍するロパーヒンは彼らの領地“桜の園”の売却を避けるべく、別荘地として貸し出す提案をするが、取り合ってもらえず、そのまま競売に掛けられる。競売当日にも舞踏会を開いているラネーフスカヤ夫人に、駆け戻ったロパーヒンが領地を競り落としたのは自分だと告げる。

作:アントン・チェーホフ

翻訳・脚色:木内宏昌

演出・脚本・美術:串田和美

出演:高橋克典/風間杜夫/八嶋智人/松井玲奈/美波/小林聡美 ほか

撮影:松井伴実 スタイリング:小川カズ ヘアメイク:佐藤健行 取材・文:坂戸希和美

関連記事

ページトップへ